「捏造された聖書」・聖書の考古学(文書学)

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聖書の考古学(文書学)シリースとしては、物騒な題名ですが、これはバート・アーマンと言うアメリカの聖書学者が書いてbest-sellerになった本の、日本語訳の本の題名です。 原題は Misquoting Jesus(イエス(の言葉)の間違った引用)で、きちんとした聖書文献学の入門書です。

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著者のアーマンは、高校時代にキリスト教原理主義に強く惹かれ、原理主義の神学校に進んでいった。ところが聖書文献学の講義や自らの研究を通して、新約聖書は写本の筆写を重ねて伝わる中で意図的な改変や加筆で多くの異文が生まれていたことを知る。そして、筆者の信奉していた原理主義が土台から揺らいでしまい、信仰の危機に直面する。

『捏造された聖書』 目次
1. キリスト教聖書の始まり
2. 複製から改竄へ
3. 新約聖書のテキスト
4. 改竄を見抜く – その方法と発見
5. 覆される解釈
6. 神学的理由による改変
7. 社会的理由による改変
8. 終章:聖書改竄

バート・アーマンの知見(正しい・・・と私は思う)
1. 我々は新約聖書の原本を持っていない。あるのは写本(コピー)のみである。原語のギリシャ語で書かれた写本は5000を超える。
2. 写本の多くは原本から数世紀後に写された写本の写本(の写本・・・)である。
3. 全ての写本に大小の写し違い、写本家の意図しない間違いや意図的な書き換え、がある。
4. 書き換えの大多数は取るに足らない、実質的でない、文書の意味を変えないものである。
5. しかし、節や段落や一つの章の意味が、どの写本を学者が原著に忠実と判断するかによって変わる重大な書き換えもある。
6. 正しい読みの判断が比較的簡単なこともあれば、判定に何年もかかり、未だに解決していない大変難しいものもある。

バート・アーマンの結論(誤り・・・と私は思う)
「とくに、冒頭でも述べたように、私は新約聖書というものを極めて人間的な書物だと見なすようになった。私たちが実際に手にしている新約聖書なるものは、人間の手で、つまりそれを伝承した書記たちの手で作られたものなのだった。・・・だから全霊感説というのは、ある意味では今の聖書には不適切だ。なぜなら神が吹き込んだという言葉は改変され、また一部では失われているのだから。・・・」

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この本が2005年にアメリカの書店に並んだ時、ベストセラーで大騒ぎとなり、バート・アーマンは超有名人となった。次々と発表した本もよく売れている。メディアで取り上げられたり、出演したりで、有名な神学者や説教者とのディベートも数多くある。現在もネットを検索してみたら、文書や動画がどんどん増えている。何故アメリカではこんなに大騒ぎになっているのに、日本のキリスト教信者の間ではあまり知られていないか?

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それは日本と違い、アメリカは進化論を学校で教える是非が裁判になる国で、聖書を一字一句すべて真実と信じこむ人がすくなくない、と言う事情によると思われる。
言語霊感(Verbal Inspiration)とは、聖書の言葉一つ一つに神の霊感が宿っていると考える、聖書の捉え方・思想である(Verbal Inspirationは逐語霊感と訳されることもあったが、機械霊感と混同され非難される場合があるので、日本の福音派では言語霊感と訳すようにすすめられている。福音派・・・本邦では米国ほど明確に福音派やリベラル派と分けることは出来ないと思うが・・・は言語霊感の立場をとるが、機械霊感説を退けている)。
アメリカではVerbal Inspirationの立場を取っている人々の中にはKing James Bible(欽定訳聖書)のみが神の霊感を受けた聖書であると主張し、様々な運動を展開している人たちが大勢いる。聖書の言葉一つ一つが重要となると、当然どの聖書を用いるかは大問題となる(この人たちにとっては)。

口語訳聖書

・・・この議論を理解するためには、日本のプロテスタント教会で主に使われている「口語訳聖書」や「新改訳聖書」の元になっている英語訳の聖書、ひいてはそれらの元になっているギリシャ語やヘブライ語の写本(群)とその編集・研究過程を知る必要がある。次回(8月21日予定)以降、解説したいと思う。(文責・義彦)

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