「さて主なる神が造られた野の生き物のうちで、へびが最も狡猾であった。へびは女に言った、「園にあるどの木からも取って食べるなと、ほんとうに神が言われたのですか」。」創世記3章1節
今日はいよいよ「罪」、人類最初の「罪」の話ですが、人類の罪の話をする前に、一つ重要な問題についてお話ししなければなりません。
禁じられた木の実を食べた最初の人アダムとエバの話しはあまりにも有名ですね。しかし、意外と理解されていないのがもう一人、もう一匹の存在です。そうです、蛇です。創世記3章1節にこう記されています。「さて主なる神が造られた野の生き物のうちで、へびが最も狡猾であった。へびは女に言った、「園にあるどの木からも取って食べるなと、ほんとうに神が言われたのですか」。」
女を騙したこの「へび」ですが、ヘブライ語の原典で、נָחָשׁナカーシと呼ばれています。このナカーシはなに者なのでしょうか?
エゼキエル書28章13-16節;「お前(ティルスの君主)は神の園であるエデンにいた。あらゆる宝石がお前を包んでいた。ルビー、黄玉、紫水晶、かんらん石、縞めのう、碧玉、サファイア、ざくろ石、エメラルド。それらは金で作られた留め金でお前に着けられていた。それらはお前が創造された日に整えられた。わたしはお前を翼を広げて覆うケルブとして造った。お前は神の聖なる山にいて、火の石の間を歩いていた。お前が創造された日から、お前の歩みは無垢であったが、ついに不正がお前の中に見いだされるようになった。お前の取り引きが盛んになるとお前の中に不法が満ち、罪を犯すようになった。そこで、わたしはお前を神の山から追い出し、翼で覆うケルブであるお前を火の石の間から滅ぼした。」(新共同訳1987)
イザヤ書14章12-15節;ああ、お前(バビロンの王)は天から落ちた。明けの明星、曙の子よ。お前は地へと切りお倒された。諸国民を打ち倒した者よ。お前は心の中で言った。『私は天に上り神の星々より上に王座を高く据えよう。そして、北の果てにある集会の山に座し、雲の頂に登りいと高き方のようになろう』と。しかし、お前は陰府へとその穴の底へと落とされる。(聖書協会共同訳2018)
エゼキエルは紀元前6世紀、イザヤは紀元前8世紀に活躍した預言者です。エゼキエルはティルスの王を、イザヤはバビロンの王を、エデンの園にいた輝ける存在に例えています。神が人を置いたエデンの園に、翼をもったケルブ(天使)として創造されたと記されています。この存在は輝ける完璧な者として造られたのですが、自らの美しさに傲り、自らを神と同等と思うようになり、神に背いたのです。そして、人間をも同じように背くよう唆したのです。
聖書学者の多くはこの輝ける存在、「ケルブ」は、エデンの園に登場する蛇のことであり、のちにサタンと呼ばれる者と考えてきました。神が創造された存在の中でこのサタンが最初の反逆者だったということです。
この「物語」から気付かされることはユダヤ教徒やキリスト教徒の世界観では、私達人間の住む世界の他に、神の世界、創世記の冒頭で神が「われわれのかたちに、われわれにかたどって人を造り」と言われた、その「我々」の世界があると言うことです。クリスチャンがクリスマスの時期に必ず読むルカによる福音書2章にキリストの誕生を羊飼いたちに告げた天使と天の天使たちの大軍の話がありますし、キリストが弟子たちに祈りの仕方を教えた時に神様のご意志が「天に行われるように、地にも」と、私たちには見えない世界が厳然としてあるということです。この見えざる世界は例え話でも作り話でもないのです。
そして、ナカーシ・サタンの神様への叛逆・罪がこの見えざる世界で始まったのです。
それゆえ、罪の問題はこの見えざる世界でも解決される必要があるということを知ります。
このシリーズの冒頭で「キリストは」「死んだ」「ために」「罪」「私たちの」の「ために」(uper)を「解決するために」と訳することができ、キリストの死は正にこのナカーシ・サタンの叛逆に片をつけたのです。
つぎは、いよいよ人、人間の根本的な罪の話です。
Satan in the Old Testament and the Serpent of Genesis 3
Heiser, M. S. (2012, 2016). In Faithlife Study Bible. Bellingham, WA: Lexham Press.
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