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聖書の読み方

キリスト教入門(9):ネフィリム

Introduction

キリスト教入門。シリーズ9番目の話ですが、「ネフィリム」についての予定原稿を読んでもらった方から、意味が分からないと言われ、どの様に説明したら良いか考えているうちに、一年近く経ってしまいました。たまたま、先の東京五輪開会式の制作及び演出を担当した小林賢太郎氏が、お笑いユニット「ラーメンズ」時代に、コントで過去のホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)を笑いの題材にしたとして解任されたと言う話題もあり、お話が分かりやすい環境になったかと思います。

今日のお話の要点は3つ、1)天使の反乱、2)神の憂、3)悪の存在(存在としての悪)、です。

1. 天使の反乱

さて、地上に人が増え始めたとき、彼らに娘たちが生まれた。神の子らは、人の娘たちが美しいのをみて、それぞれ自分が選んだ者を妻とした。主は言われた。「私の霊が人の内に永遠にとどまることはない。人もまた肉にすぎない。その生涯は百二十年であろう。」その頃、またその後にも、地上にはネフィリムがいた。神の子らが人の娘たちのところに入り、娘たちが彼らに産んだ者である。昔からの勇士で、名の知れた男たちであった。

創世記6:1-4 (共同訳2018)

このように、聖書では人類の黎明期に、創造者神の意に背いて、神の子ら、即ち天使の一団が人間の世界に降って、それぞれに人間の女たちに子供を産ませた事件が記されています。この言わば天上の存在と人間の混血が「ネフィリム」、ギリシャ語訳の聖書では「ギガンテス」「巨人」と呼ばれている者です。
天使達のこの行為は神の意に反するものでした。それは、人の寿命の上限を120歳と定めた神の宣言から分かります。エデンの園において、神に背いた人間は必ず死ぬべきものとなっていたのが、天使との混血によって長生きされては困ると言うことです。
もう一つの問題は天使たちによって伝えられてしまった悪知恵です。

2. 神の憂

案の定、神が懸念したことが起こりました。

主は、地上に人の悪が増大し、その心に計ることがみな、いつも悪いことだけに傾くのをご覧になった。それで主は、地上に人を造ったことを悔やみ、心を痛められた。

創世記6:5-6 (新改訳1970)

これら反乱の天使たちがもたらした知恵によって、人間は堕落の度を限りなく深めて行ったのです。それは、神に人間を創造されたことを「後悔」させ、心を「傷められ」る程でした。

解説

私は6歳の時に洗礼を受けてクリスチャンになりましたが、大学時代に信仰を失いかけました。そのきっかけが冒頭で触れました、ホロコースト、第二次世界大戦の時にナチ・ドイツがユダヤ人をアウシュビッツ収容所などで虐殺したドキュメンタリー映画でした。衝撃でした。あまりにも酷い。人が人にこのような仕打ちをどうしてできるのか。なぜ、神はこれを許されたのか、黙っておられたのか。神は本当におられるのだろうか。長い間、深刻に悩みました。
解決のきっかけは、あるドキュメンタリー映画の中で出演者の一人が語った「夜」と言う本からの引用でした。「夜」は、第二次世界大戦の終盤、1944年から1945年にアウシュヴィッツとブーヘンヴァルトのナチスドイツ強制収容所で父親とホロコーストを経験したことに基づいた、エリー・ヴィーゼルによる1960年の本です。
ナチの強制収容所で子供の絞首刑を見せつけられた囚人たちの中にいた筆者。体が軽かったため、即死できず半時間も苦しむ少年を見続けなければならなかった筆者の後ろで「一体、神はどこにおられるのか!」(“For God’s sake, where is God?”)と言う囚人の声がした。筆者の中で「神はどこにいるかて?そこにいる、縄にぶら下がって・・・」(“Where He is? This is where – hanging here from this gallows…”)と言う声が答えたと言うのです。
この時私は気づかされました。一番の痛みを感じられているのは神であるこ。「それで主は、地上に人を造ったことを悔やみ、心を痛められた」と言うことが理解できたのです。

3. 悪の存在(存在としての悪)

罪を考える時に、一般的にはアダムとエバの背き(the fall)のことのみが語られますが、このシリーズのはじめにありましたように、そこには人を唆したサタン(悪の力)の存在があり、そしてこのネフィリムの話しで述べられている、反乱した天使たち(悪の力)の存在があったことを理解する必要があります。人間の落ち度の裏に天上で叛逆した存在たち(悪の力)があることを知る必要があります。

次回はバベルの塔の話です。

関連聖書箇所
1) 民数記14:33  「私たちはそこでネフィリムを見た。アナク人はネフィリムの出身なので。私たちの目には自分がばったのように見えたし、彼らの目にもそう見えただろう。」(共同訳2018)

2) ペテロの手紙第一3:19-20  「こうしてキリストは、捕われた霊たちのところへ行って宣教されました。これらの霊は、ノアの時代に箱舟が通られている間、神が忍耐して待っておられたのに従わなかった者たちのことです」。(共同訳2018)

3) ペテロの手紙第二 2:4-5  「神は、罪を犯した天使たちを容赦せず、暗闇という縄で縛って地獄に引き渡し、裁きに向けて閉じ込められました。また神は、古い世界を容赦せず、不敬虔な者たちの世界に洪水を引き起こし、ただ、義を説いていたノアたち八人だけを守られました。」(共同訳2018)

4) ユダの手紙 6節 「また、自らの領分を守らず、その住まいを捨てた天使たちを、大いなる日の裁きに向けて、永久につないで暗闇の中に閉じ込められた。」(共同訳2018)


参考文献
1) Reversing Hermon : Enoch, the Watchers, and the Forgotten Mission of Jesus Christ. By Dr. Michael S. Heiser (2017)

2) 第一エノク書 6-11章
この神の子らの行為ですが、聖書のこの箇所の記述が短く難解ですが、旧約聖書が最終的な形にまとめられた紀元前3世紀から1世紀頃にユダヤ人たちが書いた第一エノク書の中に、この天使たちの反乱が詳しく解説されています。第一エノク書は旧約聖書の聖典に最終的には加えられませんでしたが、創世記のこの箇所をユダヤ人がどのように理解していたか知るのに大変貴重だと言われています。200の天使たちが結託して地上のヘルモン山に下り、人間の女たちに巨人を産ませ、人々に戦いのための兵器や人を誘惑する身の飾り物の作り方などを教え、人間を堕落させたと記されています。そしてその巨人たちは人々の食料を食い尽くし、食べ物がなくなると動物を食い荒らし、しまいには人間を食べ始め、更に共食いを始めたと記されています。このため、神は天使 ミカエル、ウリエル、ラファエル、ガブリエルを使わしてノアに箱舟を作るよう教えたり、反乱した天使たちを暗闇に投げ込ませたり、巨人たちを片付けさせたりしたのです。

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