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聖書の読み方

キリスト教入門(10):バベルの塔

Introduction

今日はシリーズの10回目。旧約聖書に出てくる、バベルの塔のお話です。クリスチャンなら知らない人はいない話で、クリスチャンでなくてもきっと何処かで聴いたり、映像を見たりしているのではないかと思います。

バベルの塔

旧約聖書最初の書、創世記11章に出てくる話です。人類に対する神様の命令、すなわち「世界に広がってそれをを治めよ」と言う命令に反して、人々が(メソポタミアのシナールの土地バベル)集まってきて、大きな塔を建てようとした話です。
神様はこれをよしとせず、それまで一つの言葉で話していた人々の言語を乱したため、人々は互いに協力することができなくなり、同じ言語の者同志、シナールから世界のあちらこちらに散って行ったとう話です。

全地は、一つの言語、同じ言葉であった。人々は東の方から移って来て、シンアルの地に平地を見つけ、そこに住んだ。彼らは互いに言った。「さあ、れんがを作り、よく焼こう。」こうして彼らにとって、れんがが石の代わりとなり、アスファルトが漆喰の代わりとなった。彼らはさらに言った。「さあ、我々は町と塔を築こう。塔の頂きは天に届くようにして、名を上げよう。そして全地の面に散らされることのないようにしよう。」 主は、人の子らが築いた町と塔を見ようと降って来て、言われた。「彼らは皆、一つの民、一つの言語で、こうしたことをし始めた。今や、彼らがしようとしていることは何であれ、誰も止められはしない。さあ、私たちは降って行って、そこで彼らの言語を混乱させ、互いの言語が理解できないようにしよう。」こうして主は、人々をそこから全地の面に散らされた。そこで彼らは、その町を築くのをやめた。それゆえ、この町の名はバベルと呼ばれた。主がそこで全地の言語を混乱させたからである。主はそこから彼らを全地の面を散らされた。

創世記11章1-9節(共同訳2018)

裏話:申命記32章

ここまではよく知られているお話ですが、実は聖書の中にこのバベルでの出来事の裏話と後日談があるのです。
先ずは裏話、旧約聖書の5番目の書物、申命記の32章に出てきます。8節と9節を読みます。

「いと高き神が国々に嗣業の土地を分け/人の子らを割りふられたとき/神の子らの数に従い/国々の境を設けられた。主に割り当てられたのはその民/ヤコブが主に定められた嗣業。」

申命記32章8-9節(新共同訳1987)

申命記32:8 「イスラエルの子ら」対「神の子ら」

Barry, John D., Douglas Mangum, Derek R. Brown, Michael S. Heiser, Miles Custis, Elliot Ritzema, Matthew M. Whitehead, Michael R. Grigoni, and David Bomar. Faithlife Study Bible. Bellingham, WA: Lexham Press, 2012, 2016. /// Biblical Studies Press. The NET Bible First Edition Notes. Biblical Studies Press, 2006. /// Tigay, Jeffrey H. Deuteronomy. The JPS Torah Commentary. Philadelphia: Jewish Publication Society, 1996.


どう言う意味かと言いますと、バベルの塔において神様が人々の言葉を乱され、色々な言語ができたときに、それぞれの言語の元に集まった民族に、神の子ら、分かりやすく言うと位の高い天使たちに、それぞれの民族を割り当て任せられた、と言うことです。その中で一つの部族ヤコブ、すなわちイスラエルを神様が自ら導く部族として選び分けた、と言うことです。

後日談:詩篇82篇

次に後日談です。詩篇82篇です。1節から8節まで。

神は 神の会議の中にたち、神々のただ中でさばきを下す。
いつまで おまえたちは不正をもってさばき、悪しき者のたちの味方をするのか。
弱い者とみなしごのためにさばき、苦しむ者と乏しい者の正しさを認めよ。
弱い者と貧しい者を助け出し、悪しき者たちの手から救い出せ。
(彼らは知らない。また 悟らない。彼らは暗闇の中を歩き回る。地の基は ことごとく揺らいでいる。)
わたしは言った。「おまえたちは神々だ。みな いと高き者の子らだ。
にもかかわらず おまえたちは人のように死に、君主たちの一人のように倒れるのだ。」
神よ 立ち上がって 地をさばいてください。あなたが すべての国々を、ご自分の者としておられるからです。(新改訳2017)

詩篇82篇1-8節(新改訳2017)

詩篇82篇:神々の会議

Hossfeld, Frank-Lothar, and Erich Zenger. Psalms 2: A Commentary on Psalms 51-100. Edited by Klaus Baltzer. Translated by Linda M. Maloney. Hermeneia—a Critical and Historical Commentary on the Bible. Minneapolis, MN: Fortress Press, 2005.

どうやら、ここでは申命記で記されていた、神の子ら、あるいは位の高い天使たちが、神様が命じたようには仕事をしなかったために、叱責されているようです。

神の領域・人間の領域

このように、バベルの塔の物語はユダヤ教、ひいてはキリスト教の世界観・歴史観を表しています。

この世界観では、先のネフィリムの話で見た通り、大きく神の領域と人間の領域があり、神の領域には全てを創造した神と、神に創造された神の子ら、または天使たちが属し、人間の領域には人間、そして目に見える全ての生物が属します。

この世界観が聖書を読み解く大切な鍵となります。

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